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Posted by - 2024.05.18,Sat
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Posted by よあ - 2008.03.16,Sun
 手を握った瞬間に分かった。コイツは木刀振り回してただけのじゃじゃ馬じゃねぇ、剣の修練をきっちりと積んだ人間だ。固くなった手のひらに、タコはあってもマメはない。無理な力を加えず、正しい型の稽古を繰り返していれば、誰でもそうなる。
 オレは当初の予定よりずっと畏まった声で、その手の主に頭を下げた。ついでを言えば、科白の内容は予定外だ。
「カナデンシスだ、世話になる」
「あたしはリコ。よろしく、カナデンシス」
「ディーでいい。長ぇし呼び辛ぇだろ」
「でも、忘れると悪いから」
 リコと名乗った赤毛の女は、外見そのままのあっぴろげな性格の持ち主らしい。何度かブツブツとオレの名を繰り返し、ようやくやめたと思ったら「よっしゃ覚えた」。……暗記してたのかよ。
 今日からオレは、コイツの率いるギルドの一員になる。推薦を受けた時も、コイツらの顔を見た時も気乗りはしなかったが、今、リコの手を握ってそれを決めた。
 しかしコイツがギルマスで大丈夫か、とか考えていると、連中の中では一番責任能力の高そうな眼鏡の女が手を差し出してきた。彼女ではなくリコがギルド責任者の座に収まっているあたり、コイツらの関係や思考回路は、まだオレには理解不能だ。
「アルフよ。多分、私が一番世話をかけると思う。打たれ弱いから」
「はぁ?」
「その分の攻撃能力は保証するわ。よろしく」
 何だかよく分からん間に、握った手は離れていってしまった。
 続いて手を差し出してきたのは、連中の中では唯一の野郎だった。さっきの眼鏡も女にしては背が高かったが、コイツは輪をかけてデカい。中の上くらいには背丈があるオレが、視線を持ち上げないと顔が見えない。
「おれはコラーダ。よろしくね、ディー」
「あ、あぁ、よろしく……」
「そうそう、あのねぇ、カナくんがいいって猛烈プッシュしたの、コルなんだよー」
 脇から甲高い声が割り込んできて、オレはぎょっと身を引いた。見れば人参みたいな色の髪の少女が、何やら得意そうな表情で仁王立ちをしている。カナくんて誰だ。
「他にもパラディンさんは結構居たのに、どーしてもカナくんがいいって」
「……ユリス。私の気のせいじゃなければ、ディー、ヒいてるわよ」
 気のせいじゃねぇよ。
「あー、うん、事実なんだけどね。どうしても君が良かったんだ」
 お前までそんなこと言い出すのかよ気色悪ィな!
 ほとんど反射で野郎の手を振り払うと、好機とばかり、黄色い声の持ち主が猿のように飛びついて来やがった。
「わたしはユリス、よろしくね、カナくん!」
「…………その呼び方はやめてくれ」
 現状では精一杯の、拒絶の言葉だった。

005■「未知との遭遇」 カナデンシス
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