10：迷子

　右も左も分からない、頼れるものは自分達だけ。
　置き去りにされた幼子のような心細さと戦いながら、懸命に紙上へと目印を刻んでゆく。

■視点04／64文字／B3Fにて■

09：次の目的地

　探すまでもない、地図の描線が途切れている部分がそれだ。けれどもし、迷宮の全てを解き明かしたら──

「ま、そんなコトあり得ない、か」

■視点05／65文字／迷宮入口前にて■

08：忘れ去られた村

　昔は農業の街だったんだよ。いや、街という規模でもなかった。
　それでも幸せに暮らせていたって、執政院の連中は知らないのだろうね。

■視点01・06／64文字／老人の話■

07：宝箱

　薬品の状態は良好で、使っても問題はないだろう、と医術師。
「しかしなんで、こんな場所に」
　樹海の只中に医薬品。確かに妙な話だった。

■視点01／65文字／B1Fにて■

06：月夜の宴

　久しぶりに仰ぐ月の下、静かに杯を傾ける。
　情緒を感じられる歳ではないが、無音の宴がこんなに楽しいのは、仲間に恵まれたからだろう。

■視点02／65文字／郊外にて■

05：地図に秘められた謎

「どうして壁が書かれていたんだろうな。謎だ……」
「単なるお前のミスだろ……」
　ありもしない壁を書き、迷う。誰もが一度は犯す過ちだ。

■視点05／65文字／B11Fにて■

04：水先案内人

　そんなものが居ればどんなに楽か、と心から思う。
　とにかく地図を書け、と右も左も知れない場所に放り出されて、不安は募るばかりだ。

■視点03／64文字／B1Fにて■

03：古い本

「写本か。感心だな」
　突然の師の声に、身を固くする。

　貴重な古書を持ち出すのは憚られた。自分ごと、塵と消えるかも知れなかったから。

■視点05／65文字／回想■

02：情報収集

「先輩の話は聞いておくものだぜ」
　男は酒臭い息を吐いた。思わず顔を背ける。
　情報不足で死ぬよりも、こんな風に堕落する方が数倍嫌だ。

■視点02／65文字／酒場にて■

01：旅立ち

　そう呼ぶにはあまりにもささやかだった。何しろ同じ街の中だ。
　だが──平和な日常から隔たった世界への、大いなる第一歩には違いない。

■視点01／65文字／肉屋にて■

20：また、明日

　えー、と不満そうな声が上がる。

「もう少しで階段が……」
「その『もう少し』が怖いんだ。奇襲でも受けたら全滅だろう、早く糸を出せ」

■視点02／64文字／B15Fにて■

19：虚無

　その言葉には、「果て無き空」の意もあるらしい。
　だとしたら、もしかしたら、このからだの内側にも、青を宿せるかも知れない。

■視点03／61文字／執政院にて■

18：一途な想い

　視線だけでも充分に、彼の気持ちは伝わってきた。
　愛しているのだ。建物も広場も、行き交う人々も、この土地にある全てのものを。

■視点06／62文字／広場にて■

17：図書館

　写本室の隅に、知った顔を見つけた。

「やぁ」
「お前も来てたのか」

　そして、離れて座った。
　この距離、この時間が、とても落ち着く。

■視点05／64文字／執政院にて■

16：氷点下の微笑

　触れたらきっと、冷たさではなく痛みを感じるのだろう。

「馬鹿を言うのはどの口かな？」

　なまじ綺麗な笑みが、今は余計に恐ろしかった。

■視点01／65文字／商店にて■

15：博愛主義

「そうでもないです」

　そう、単に愛情の優先順位を決めるのが下手なだけだ。
　択ばざるを得ない時が来たら、一体自分はどうするのだろう。

■視点03／63文字／酒場にて■

14：利己的

　誰より自分を守ろうとする。誰のためでもなく、自分の意思で前へ進む。
　そんな人材でなければ、樹海の最深部になど辿り着けはしない。

■視点01／64文字／冒険者ギルドにて■

13：制服

　というワケではないが、大体は白のコート姿だ。
　服を考える手間がなくていい、というのは、休日でも制服を着る学生の心理と似ている。

■視点04／64文字／宿屋にて■

12：理由

　恩返しをしたくて、家を離れ、樹海に入った。

「それを『恩を仇で返す』と言うんだ」

　久しぶりに会う師は、悲しそうな顔をしていた。

■視点05／63文字／酒場にて■

11：お邪魔虫

　FOEより厄介なのは、藪から飛び出てくる敵だ。
　ケルヌンノス戦直前、軍隊バチ5匹の奇襲、死者一名。邪魔にも限度というものがある。

■視点02／65文字／B10Fにて■

10：異物

　樹海の魔物は、要は世界樹の抗体なのだろう。異物を排除する為の、生物的防衛機構。

　いつから人は、世界と隔てられた異物となったのか。

■視点04／65文字／B30Fにて■

09：秒読み

　5秒、4秒、カウントの正確さには自信がある──ゼロ。

　炎を割り裂き刃を叩き込む技、チェイスファイアは、一秒の誤差が命取りだ。

■視点01／63文字／B22Fにて■

08：眠れない

　その相談を持ちかけて、差し出された答えは酒瓶だった。飴色の液体は、既に瓶の半ばほどまで減っている。

　結局、皆がそうなのだろう。

■視点05／64文字／宿屋にて■

07：境界線

　雑木林から密林、水底の如き蒼世界、そして枯野。
　きっかり5フロアごとに、まるで誰かが定規を当てて計ったように──

（……まさかな）

■視点04／65文字／宿屋にて■

ギルドの男性陣について

　思ったんだけど、なんか「弱い」っつーか、子供だよなぁ……女性に対する攻撃性とか所有欲求が足りないというか、ある意味で女性的というか。

・マザコン
・恋する乙女
・師匠コン
・可愛さを武器にするのは女だけじゃないよ☆ミ

　箇条書きにして絶望した。こりゃ駄目なワケだわ。

　「つよさ」はともかく「したたかさ」は、女性の方が断然上だと思っているので、その辺が無意識に影響しているのかも知れない。