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Posted by - 2024.05.18,Sat
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Posted by よあ - 2007.06.29,Fri
「君、どれだけ神経太いんだよ」

 連れのメディックに尋ねられて、ソードマンは咀嚼活動を一時停止させた。
 しかし口内の諸々は、発声を妨げるには充分すぎる量だ。もっさもっさと顎を動かす。
 プツリと切れるトマトの皮の食感、煮崩れたタマネギの芳醇な甘さ、絶妙のバランスで加えられた香辛料の風味を楽しんだ後、ようやく白衣の青年に向き直った。

「これは野菜スープです」
「見れば分かる」
「じゃあ、あれは何だった?」
「……植物、ではない、けど」

 メディックは、暗い表情で己の皿を見下ろした。
 メインディッシュたる鶏の照り焼きは幻だったかのように消え去り、付け合せの野菜だけが綺麗に皿を飾っている。可愛らしいオレンジ色のニンジンと、鮮やかな緑色に茹で上がったアスパラガス、どちらも冷め切って可哀想なことになっていた。
 それでも口に運べば、バターの香り、シャッキリした歯ざわり、野菜特有の瑞々しい甘みが楽しめるはずだ。

 その青臭さが、生きた植物の香りが、今の彼の神経には堪えるのだろう。

 迷宮の中で生まれて初めて、人の形をしたものに刃を向けた。
 憎悪を滾らせた視線、斬りつけた瞬間に耳に届いた苦鳴、点々と砂に散った緑色も、全て生々しく記憶に残っている。血溜りから立ち上ってくる匂いは、樹木を傷付けた時のそれによく似ていた。

 だから何だ。

 「もらうぜ」と一言断って、ソードマンはフォークを伸ばした。アスパラガスの表皮に、銀色の先端が沈む。ずぷり。
 もちろんアスパラガスは悲鳴を上げない。代わりに対面の男が顔をしかめた。

「君はもう少し、まともな倫理観を持ってるヤツだと思ってたよ」
「そりゃどうも。オレもお前のことは、も少し想像力のあるヤツだと思ってたね」

 サクサク繊維を噛み千切り、大げさに肩をすくめて見せる。

「自分が何を食べてるのか、知らないワケじゃないだろ? 料理に口なしってだけだ」

 一度屠殺場にでも来るか?と尋ねると、メディックは片手で目元を覆ってしまった。

■視点01/モリビト殲滅作戦■
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